夢か現か四月馬鹿 - 2/2

 気が付くと、輝は事務所にいた。目の前には薫と翼がいる。二人で話していたようだが、輝に気がついたのか薫がこちらに向かってこう言った。
「今まで悪かったな、天道」
「……は!? 急にどうした!?」
 輝はつい自分の耳を疑ってしまった。あの薫が、自分に謝罪するとは……。明日は槍が降るのかもしれない。
「新しい年度が始まるだろう?せっかくの機会だし、自身の振る舞いを省みたんだが……君に対する言動に少々問題があるように感じた」
(少々……?)
 輝は訝しみながら薫の言葉を聞いていた。
「だから、今までの非礼を謝罪する」
「……桜庭、お前何か悪いもんでも食ったのか?」
「僕は至って正常なんだが……?」
 冗談のつもりで訊いたわけではないのだが、大真面目に返されてしまった。
 薫の言動に驚愕していると、今度は翼が信じられないような言葉を切り出した。
「輝さんと薫さんなんてもう知りません! オレはドラスタを辞めます!」
「翼!? お前までどうしちまったんだよ!? っていうかドラスタを辞める!?」
「くっ……こうなってしまう前に僕が自身の行いにもっと早く気付いていれば……」
 薫も輝と同様に翼の言葉に衝撃を受けているようだった。
「桜庭も、ぶつぶつ言ってないで一緒に翼を止めてくれ!」
「こうなってしまったのは僕にも責任がある。僕もドラスタを辞めることにする」
「桜庭まで!? 俺達一番星目指して一緒に頑張ってきたじゃないか!その夢はどうすんだよ!二人とも、待ってくれ……!」
 二人が遠のいていく――。

 ――そんなところで、目が覚めた。
(……なんだ、夢か。)
 輝は先程の出来事が夢であったことに安堵しつつ、朝の支度を始めた。

 輝が事務所に行くと、薫と翼がいた。二人で話していたようだが、輝に気がつくと二人ともこちらに向いた。
「おはよう、天道」
「お、おはよう……」
 あいつから挨拶してくるなんて珍しいな、などと少々失礼なことを考えてしまった。
「輝さん、おはようございます……」
「おはよう。……?」
 翼の雰囲気もなんだかいつもと違う。
 輝が二人の様子が普段と違うことに首を傾げていると、薫が次のように切り出した。
「ところで、君に言っておきたいことがある」
「な、なんだよ」

 そして、薫はこちらに向かってこう言った。

「今まで悪かったな、天道」

――完――